カフェ・ブレイク

「はるちゃん、夜中に大文字山に登るんですって。消し炭?を拾うらしい。物好きよね~~~。」

え?
消し炭?

「それは……危険じゃないの?はるちゃん1人で?れいちゃんも?」
れいちゃんはぶるぶると首を横に振り、はるちゃんは首を少し傾げた。

「私は無理!嫌!興味ない!」
「……たぶん大丈夫です。他に人いっぱいいるし。」

大丈夫……なのか?
一緒について行ったげたほうがいいのかしら。
でも、私、山なんて登ったことないし……。

とりあえず立ち話もナンなので、井上さんの待つ車に乗車した。
「……大瀬戸先生、ご結婚されたんですか?」
タクシーでもハイヤーでもない、いかにも高級車に運転手さん、という取り合わせに、れいちゃんがそう聞いた。

「いいえ。バツイチのまんまよ。……ほら、私の車に3人はきついから。」
どうせ言葉を濁しても、誤魔化しても、要人さんの会社の本社ビルを借りる時点でイロイロ怪しいとは思うけど……とりあえずはそんな風に言うにとどめた。

「え?まだあの車乗ってるの?とっくに乗り換えたと思ってた。……て、本気でボロボロになるまで乗るんですか?」
「もちろん!愛着あるもの。」
至極真面目にうなずいた。

それまで無表情だった井上さんの肩が少し揺れた。
……今まで個人的なことはお伺いしたことないけど、井上さんもかなり車が好きらしいことを思い出した。

程なく要人さんの会社の本社に到着した。
「え?……ここ……に、レストランが入ってるんですか?」
はるちゃんがビルを見上げてそう聞いた。

「馬鹿ね!そんなわけないでしょ!……でも、何で?……あ、この会社って、ミュージカルとか歌舞伎とか協賛いっぱいしてる……」
れいちゃんは思い当たるところがあったらしく、少し考えて、目をキラキラさせて私を見た。
「もしかして、先生、『おばさま』を紹介してくださるんですか?」

……それは、考えてなかったわ。
この場合の「おばさま」というのは、世間で言うところの「タニマチ」を指す。
経済的に支援してくれる大事な存在だ。

でも……そうね。
要人さん、芸術関係に出資いっぱいしてらっしゃるらしいから、お願いしてみれば案外あっさり引き受けてくださるかもしれない。
……でも、見返りを要求されたりして。

「ごめん。そこまで考えてなかった。『おばさま』じゃなくて『おじさま』になってくださるかもしれないけど……そのあたりは、また日を改めて。……井上さん、ありがとうございました。」

井上さんは恭しく会釈して
「お帰りの際も、お声掛けください。」
と番号をくださった。