要人(かなと)さんは、知ってか知らずか、それまでと何ら変わらず気にかけて下さった。
義人くんが如何に放蕩息子かを語る時の楽しそうな顔ったら!
性格悪~~~。
「そういや、ようやく娘にもお友達ができたそうです。ホッとしました。……中学の入学式で挨拶をした子らしいですが、夏子さん、わかりますか?」
……要人さんでも、娘さんの話をする時は、普通の親の顔になるのね。
ちょっと新鮮な気分。
「何となく覚えてます。大村さんだったかな。1学期の中間も期末もぶっちぎりのトップだったようですよ。」
「ほう。」
要人さんは目を細めた。
「コンプレックスを感じてますますいじけへんといいけど……」
「……娘さんには、甘いんですね。」
クスッと自然に笑いがこぼれた。
「まあ、人並みに?……妻にも甘いですよ。」
いけしゃあしゃあと要人さんはそう言ったので
「お妾さん達にも?」
と、意地悪く突っ込んでみた。
でも要人さんは、とびっきりの笑顔で言った。
「夏子さんにも、ね。」
……負けた。
「義人くんにも、これぐらい余裕があればいいのに。」
ついそうこぼすと、要人さんはさらりと言った。
「愚息はまだ16歳。夏子さんには不足でしょう。私でよろしければ、いつでもお慰め、いたしますよ?」
それがいつもの冗談や軽口なのか、あるいは誘ってるのか……反別しかねた。
……「いつでも」という言葉は、本気なのか、京都人の社交辞令なのか……どっち?
わからないので、私は曖昧に
「そうですね。」
とだけ答えた。
要人さんは、微笑をキープして、ただ頷いていた。
それがどういう意味合いを含むのか、私は気づかないふりをした。
……少なくとも、その気のない女を無理やり抱くほど、要人さんは女日照りじゃない。
私さえよろめかなければ、このままぬるま湯の関係が続くだろう。
そう……私は、まったくもって、深く考えてなかった。
要人さんの悪戯心のせいで、義人くんが誤解をこじらせてるとは、露ほども……気づかなかった。
8月16日は京都の五山で送り火が焚かれる。
大文字が有名だが、船形や妙法、鳥居もなかなか壮観だ。
私の住むマンションの屋上からも見ることができるが……今年は、元教え子で現役タカラジェンヌのれいちゃんが同期のお友達と遊びに来ることになった。
人目につかない個室でゆっくり送り火を見られるお店を要人(かなと)さんに相談したところ、本社ビルの最上階の応接室を貸してくださることになった。
「お食事も提供しますよ。馴染みのステーキハウスのシェフに行ってもらいましょう。」
要人さんのお言葉に甘えて、のほほーんと当日を迎えた。
義人くんが如何に放蕩息子かを語る時の楽しそうな顔ったら!
性格悪~~~。
「そういや、ようやく娘にもお友達ができたそうです。ホッとしました。……中学の入学式で挨拶をした子らしいですが、夏子さん、わかりますか?」
……要人さんでも、娘さんの話をする時は、普通の親の顔になるのね。
ちょっと新鮮な気分。
「何となく覚えてます。大村さんだったかな。1学期の中間も期末もぶっちぎりのトップだったようですよ。」
「ほう。」
要人さんは目を細めた。
「コンプレックスを感じてますますいじけへんといいけど……」
「……娘さんには、甘いんですね。」
クスッと自然に笑いがこぼれた。
「まあ、人並みに?……妻にも甘いですよ。」
いけしゃあしゃあと要人さんはそう言ったので
「お妾さん達にも?」
と、意地悪く突っ込んでみた。
でも要人さんは、とびっきりの笑顔で言った。
「夏子さんにも、ね。」
……負けた。
「義人くんにも、これぐらい余裕があればいいのに。」
ついそうこぼすと、要人さんはさらりと言った。
「愚息はまだ16歳。夏子さんには不足でしょう。私でよろしければ、いつでもお慰め、いたしますよ?」
それがいつもの冗談や軽口なのか、あるいは誘ってるのか……反別しかねた。
……「いつでも」という言葉は、本気なのか、京都人の社交辞令なのか……どっち?
わからないので、私は曖昧に
「そうですね。」
とだけ答えた。
要人さんは、微笑をキープして、ただ頷いていた。
それがどういう意味合いを含むのか、私は気づかないふりをした。
……少なくとも、その気のない女を無理やり抱くほど、要人さんは女日照りじゃない。
私さえよろめかなければ、このままぬるま湯の関係が続くだろう。
そう……私は、まったくもって、深く考えてなかった。
要人さんの悪戯心のせいで、義人くんが誤解をこじらせてるとは、露ほども……気づかなかった。
8月16日は京都の五山で送り火が焚かれる。
大文字が有名だが、船形や妙法、鳥居もなかなか壮観だ。
私の住むマンションの屋上からも見ることができるが……今年は、元教え子で現役タカラジェンヌのれいちゃんが同期のお友達と遊びに来ることになった。
人目につかない個室でゆっくり送り火を見られるお店を要人(かなと)さんに相談したところ、本社ビルの最上階の応接室を貸してくださることになった。
「お食事も提供しますよ。馴染みのステーキハウスのシェフに行ってもらいましょう。」
要人さんのお言葉に甘えて、のほほーんと当日を迎えた。



