急須でほうじ茶を入れてる間に、竹原くんがお料理を開けてくれた。
「うわっ!これ、魚や。……鯖?」
竹原くんが顔をしかめた。
鯖?
何で?
「夏子さん、大丈夫?鯖のパイ、イチゴのスープ、たけのこのケーキやわ。」
……材料とお料理が合ってないような気がするんですけど。
「シェフ、チャレンジャーなの?」
竹原くんは苦笑いした。
「うちの母親の思いつきを、一生懸命、実現してくれてはる、腕のいいシェフやで。また一緒に食いに行こ。」
うん、と言ったら、デートになるんだろうか。
逡巡してると、竹原くんは肩をすくめた。
「いちいちまじめに捉えなくていいから。京都で『また』とか『今度』って誘うのは、社交辞令やし。」
そうなの?
……ややこしいのね。
鯖のパイは、意外とおいしかった。
ゆず風味の白味噌と鯖を合わせてるらしい。
「あ、旨い。うん、これは大丈夫や。……去年の夏、鰻のぶつ切りのゼリー寄せ作らはってんかー。ビジュアルと食感がえぐくてさー、あんなんやったらどうしようかと思たわ。」
「ジェリード・イール?ロンドン名物よね。」
そう聞くと、竹原くんの反応が変わった。
「へえ!よぉ知ってるねえ。留学でもしてたん?」
と言ってから、肩をすくめておどけて笑って続けた。
「フィッシュ&チップスのほうが、よっぽど旨いやんなあ?」
何がおもしろいと言うわけでもないけど、竹原くんに釣られてふっと口元がゆるんだ。
すると竹原くんは、今度は本当に顔を輝かせてニコニコしだした。
「やっと夏子さんの笑顔を見られた。」
……ぐっ、と来た。
そっか。
私、この3ヶ月間、愛想笑いと営業スマイルしかしてなかったかも。
新しい学園に慣れなきゃ、って必死だったし、薬剤師の和田先生は親切だけどおしゃべりだから会話の内容にも気を遣うし……間借りした女子寮では料理も出来ず侘びしい食生活が続いたし……鬱屈してた気がする。
「……ありがとう。」
竹原くんの親切と心配りに改めてお礼を言った。
「急に、しおらしくなって……びっくりするやん。」
イチゴのスープに顔をしかめてから、竹原くんはニッコリ笑いかけてくれた。
「どういたしまして。お礼は、夏子さんの手料理でいいよ。料理、得意やろ?」
イチゴのスープに、同じく顔をしかめ、そのままの表情で聞き返した。
「何で?」
「和田先生が言うてた。はいはい、そんな顔しない。口角(こうかく)上げてへんと、変な皺になるで。」
そう言いながら竹原くんは手を伸ばしてきて、私の口もとに触れた。
……冷たい指先に、ビクッと体が震えた。
「うわっ!これ、魚や。……鯖?」
竹原くんが顔をしかめた。
鯖?
何で?
「夏子さん、大丈夫?鯖のパイ、イチゴのスープ、たけのこのケーキやわ。」
……材料とお料理が合ってないような気がするんですけど。
「シェフ、チャレンジャーなの?」
竹原くんは苦笑いした。
「うちの母親の思いつきを、一生懸命、実現してくれてはる、腕のいいシェフやで。また一緒に食いに行こ。」
うん、と言ったら、デートになるんだろうか。
逡巡してると、竹原くんは肩をすくめた。
「いちいちまじめに捉えなくていいから。京都で『また』とか『今度』って誘うのは、社交辞令やし。」
そうなの?
……ややこしいのね。
鯖のパイは、意外とおいしかった。
ゆず風味の白味噌と鯖を合わせてるらしい。
「あ、旨い。うん、これは大丈夫や。……去年の夏、鰻のぶつ切りのゼリー寄せ作らはってんかー。ビジュアルと食感がえぐくてさー、あんなんやったらどうしようかと思たわ。」
「ジェリード・イール?ロンドン名物よね。」
そう聞くと、竹原くんの反応が変わった。
「へえ!よぉ知ってるねえ。留学でもしてたん?」
と言ってから、肩をすくめておどけて笑って続けた。
「フィッシュ&チップスのほうが、よっぽど旨いやんなあ?」
何がおもしろいと言うわけでもないけど、竹原くんに釣られてふっと口元がゆるんだ。
すると竹原くんは、今度は本当に顔を輝かせてニコニコしだした。
「やっと夏子さんの笑顔を見られた。」
……ぐっ、と来た。
そっか。
私、この3ヶ月間、愛想笑いと営業スマイルしかしてなかったかも。
新しい学園に慣れなきゃ、って必死だったし、薬剤師の和田先生は親切だけどおしゃべりだから会話の内容にも気を遣うし……間借りした女子寮では料理も出来ず侘びしい食生活が続いたし……鬱屈してた気がする。
「……ありがとう。」
竹原くんの親切と心配りに改めてお礼を言った。
「急に、しおらしくなって……びっくりするやん。」
イチゴのスープに顔をしかめてから、竹原くんはニッコリ笑いかけてくれた。
「どういたしまして。お礼は、夏子さんの手料理でいいよ。料理、得意やろ?」
イチゴのスープに、同じく顔をしかめ、そのままの表情で聞き返した。
「何で?」
「和田先生が言うてた。はいはい、そんな顔しない。口角(こうかく)上げてへんと、変な皺になるで。」
そう言いながら竹原くんは手を伸ばしてきて、私の口もとに触れた。
……冷たい指先に、ビクッと体が震えた。



