カフェ・ブレイク

ちょっと待って?
マジで私、中学生に口説かれてる?

えええええ?
一瞬焦ったけれど、竹原くんの行状を思い出して、深呼吸してから言った。

「誰かれ構わず、そんなこと、言って回ってるの?」
竹原くんの瞳に暗い影がさした。

……傷つけてしまった?
さっきとは違う意味で焦りだした。

どうフォローすべきか困ってると、竹原くんが無理矢理ほほ笑んでくれた。
「いくら京都に銘木が多いって言うても、いちいち女の子みんなに当てはめてくんは不可能やわ。」

ちょっとホッとして、私もほほ笑んだ。

でも、竹原くんはスッと表情を改めて付け加えた。

「夏子さんが初めてや。」

やばっ!
少なくとも、今竹原くんが言ったことは本当なのだろうということは伝わってきた。

熱に浮かされた少年の戯言とも思えなかった……実際、彼はそっちの意味でももう少年を卒業してるらしいし……むにゃむにゃ。
でもだからと言って、あっさり中学生にほだされるわけにはいかない。

私は、わざとため息をついて、吐き捨てるように言った。
「嘘くさっ。」

竹原くんは、今度は隠そうともせず、傷ついていた。

……ごめん……
心の中でそう謝りつつも、私は先に進むよう促した。

「ほら、歩道にあんまり立ち止まってたら迷惑よ。」
はいはい、と小さくつぶやいて、竹原くんはまた歩き出した。

背中がさっきより淋しそう。
私の中に罪悪感が広がる。
それ以上、言葉が出ない。

私たちは、ただ黙々と歩いて、マンションへと向かった。



「ここ?」
私の新居となるマンションに到着すると、竹原くんはばつの悪そうな顔になった。

「ええ。そうよ。この位置、この間取りにしては安かったの。隣に大きい会社のビルが建ってしまって、日当たりがものすごく悪くなったんですって。」

そう言いながら、エントランスに入ってく。
コンシェルジュはいないけれど、オートロックなのでセキュリティも安心。
ピッとICカードをかざすと、ドアが開いた。

「ありがとう。ここまででいいわよ?」
竹原くんにそう言って帰らそうとしたけれど、
「いいからいいから。」
と、押し切られてしまった。

エレベーターで3階に上がる。
「部屋まで来ても、お茶も出してあげられないわよ?食器も調理器具も届いてないから。」
そう言いながら部屋のドアにもカードをかざした。

ピピピ、と小さな音がして、ドアのロックが開いた。
「へぇ。こうなってるんや。」

物珍しそうに覗き込みながら、竹原くんは私の手からスーツケースを奪った。

何で?
驚いて竹原くんを見る。

竹原くんは、ニッと笑ってから少しかがむと、いきなり私の膝裏に自分の腕をぐいっと押しつけた。

「何!?危ないっ!」

バランスの崩れた私の背中にも、竹原くんの腕。

ええっ!?

もしかして、もしかしなくても、これは……お姫様抱っこ!

慌てて竹原くんの首に腕を回してしがみついた。