「……好きな人、いるんですか?」
なっちゃんが、暗い目で俺を見てそう聞いてきた。
「そうですね。お客様みんなのことを愛してますよ。」
完全に営業スマイルでそう言ってのけた。
なっちゃんはため息をついた。
「……もう、いいです。」
ダメだ、笑えてきた。
さっきから、何だろうな、これ。
俺、天邪鬼(あまのじゃく)か?
「何でそんな顔してるんですか?」
なっちゃんにそうツッコまれて、俺は肩をすくめた。
「失礼しました。地顔ですが、お気に召しませんでしたか。いつものコーヒー、お口直しに飲まれますか?」
俺は返事を待たずに、コーヒーの準備を始めた。
なっちゃんは納得いかないらしく、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
俺はコーヒー豆を一粒、指で摘まむと、なっちゃんの口元へと近づけた。
驚くなっちゃんの唇の間に、コーヒー豆を押し込む。
なっちゃんの唇に触れた自分の右手の親指と人差し指に軽く口づけてから、俺も口の中に1粒の豆を放り込んだ。
軽くかみ砕くと、香ばしい苦みが口の中に広がる。
「……何?」
なっちゃんが真っ赤になってそう聞いた。
「何って、コーヒー豆。」
平然とそう答えると、なっちゃんは俺の右手を指さした。
「そうじゃなくて、何で、今、指……」
……ああ、そっちね。
間接キス?……って、赤くなってるのか。
小学生かよ。
俺は笑いを噛み殺して、からかうように言った。
「かわいいから。」
なっちゃんは、顔から火を噴くんじゃないかというぐらい、さらに赤くなって、ふるふると震え出した。
ゴリゴリと豆を挽いて、ネルドリップでコーヒーを入れる。
甘い香りが漂うと、気持ちも落ち着いてくる。
「どうぞ。」
なっちゃんは、ため息をついた。
「……ありがとう。いただきます。」
それでも礼儀正しいなっちゃんに微笑んで会釈する。
なっちゃんはコーヒーの香りを楽しんでから、カップに口をつけた。
「……美味しい。やっぱり、美味しいわ。」
そう言って、少し淋しげなほほ笑みを浮かべた。
なっちゃんと知り合って3年以上たつけれど、はじめて見る表情だった。
お店のドアが開いて、他のお客様が来られた。
このところよく来られるサラリーマンが、ご新規のお客様を連れて下さったようだ。
「いらっしゃいませ。」
「奥のテーブル借りてええ?」
「どうぞ。」
営業スマイルで答えると、お水とおしぼりを準備する。
チラッとなっちゃんを見ると、気丈に背中を伸ばしてコーヒーを飲んでいた。
カップ越しに目が合う。
ふっ……と、営業用じゃない心からの笑みがこみ上げた。
なっちゃんは、慌てて目をそらした。
なっちゃんが、暗い目で俺を見てそう聞いてきた。
「そうですね。お客様みんなのことを愛してますよ。」
完全に営業スマイルでそう言ってのけた。
なっちゃんはため息をついた。
「……もう、いいです。」
ダメだ、笑えてきた。
さっきから、何だろうな、これ。
俺、天邪鬼(あまのじゃく)か?
「何でそんな顔してるんですか?」
なっちゃんにそうツッコまれて、俺は肩をすくめた。
「失礼しました。地顔ですが、お気に召しませんでしたか。いつものコーヒー、お口直しに飲まれますか?」
俺は返事を待たずに、コーヒーの準備を始めた。
なっちゃんは納得いかないらしく、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
俺はコーヒー豆を一粒、指で摘まむと、なっちゃんの口元へと近づけた。
驚くなっちゃんの唇の間に、コーヒー豆を押し込む。
なっちゃんの唇に触れた自分の右手の親指と人差し指に軽く口づけてから、俺も口の中に1粒の豆を放り込んだ。
軽くかみ砕くと、香ばしい苦みが口の中に広がる。
「……何?」
なっちゃんが真っ赤になってそう聞いた。
「何って、コーヒー豆。」
平然とそう答えると、なっちゃんは俺の右手を指さした。
「そうじゃなくて、何で、今、指……」
……ああ、そっちね。
間接キス?……って、赤くなってるのか。
小学生かよ。
俺は笑いを噛み殺して、からかうように言った。
「かわいいから。」
なっちゃんは、顔から火を噴くんじゃないかというぐらい、さらに赤くなって、ふるふると震え出した。
ゴリゴリと豆を挽いて、ネルドリップでコーヒーを入れる。
甘い香りが漂うと、気持ちも落ち着いてくる。
「どうぞ。」
なっちゃんは、ため息をついた。
「……ありがとう。いただきます。」
それでも礼儀正しいなっちゃんに微笑んで会釈する。
なっちゃんはコーヒーの香りを楽しんでから、カップに口をつけた。
「……美味しい。やっぱり、美味しいわ。」
そう言って、少し淋しげなほほ笑みを浮かべた。
なっちゃんと知り合って3年以上たつけれど、はじめて見る表情だった。
お店のドアが開いて、他のお客様が来られた。
このところよく来られるサラリーマンが、ご新規のお客様を連れて下さったようだ。
「いらっしゃいませ。」
「奥のテーブル借りてええ?」
「どうぞ。」
営業スマイルで答えると、お水とおしぼりを準備する。
チラッとなっちゃんを見ると、気丈に背中を伸ばしてコーヒーを飲んでいた。
カップ越しに目が合う。
ふっ……と、営業用じゃない心からの笑みがこみ上げた。
なっちゃんは、慌てて目をそらした。



