「恋愛して、ごめんなさい」
 こんなことを言うのは何回目なのだろうか。もうあの出来事から数年は経過しているというのに私はいまだに過去から抜け出せないでいる。私はこのセリフを言う時はいつも誰か自分の一番お気に入りの性格を持っている人に出会った時に呟いているのだが、一々出会っては呟いて、出会っては呟いてを繰り返してはもうそろそろ呟く口が攣ってしまいそうだ。
 馬鹿らしいと思いつつ、もう今度の呟きでおしまいにしようと何度も考えていたのだが何度もその通りに行かなくて、遂に「おしまいにしよう」と考える事さえも退屈に思えてきた。呟き終わった私は万年床に横になり、天井の木目を見る。見るたびに木目の節がだんだんあいつの目のように見えてきて仕方ない。目のようだと考えるともうそれ以外には考えられなくなる。ふと今日はなんでこんなあほらしい事を長々と続けているのかと考えてみたくなった。よく考えればこれで思い返すのは十度以上になるかもしれない。しかし私は改めて思い返してみたくなったから思い返すとしよう。