「神口くん。」



そしてその次の日、わたしは理玖くんに話しかけた。



「……あの、一昨日は、ありがとう。」



無口だと評判な理玖くんに、わたしは少しびくびくしながらそう言った。


なにせ、そのときもぼけーっと無表情でおりましたから。






「別に。」



案の定、返ってきた言葉はこれ。


まあこのくらいは予想していたから、驚きはしなかったけど。



でも、このあとわたしはとても驚いたのだ。



「……体調、よくなったわけ?」



「へっ?……あ、うん。お陰様で……」



びっくりした、なんてもんじゃなかった。


会話はあれで終わりだと思ってたし、何よりも心配してくれたことが、想像の範囲外だったから。


もちろん、彼のペースはそのままだけれど。



「……体調悪いなら、無理しないほうがいいよ。」


「あっ、うん、そうだよね。つ、次は気をつけるね?」



挙げ句、その抑揚のない口調でそんなことまで言われた。


動揺しないほうがおかしい。