「あ、おはよー愛。」
「暖ちゃんおはよう!」
毎朝の恒例行事を済ませると、わたしは自分の席に向かう。
振りかえって挨拶をしてくれたのは、前の席である加藤暖(かとうのん)ちゃん。
のん、とか柔らかい名前なのに、なかなかの毒舌……だったりする。
「今日も朝から挨拶ですか。」
「うん、そうなの!理玖くん今日もかっこいいっ!」
「……よかったね。」
もうその棒読みな「よかったね。」をわたしは何回も聞いている気がする。
「……なに、その不満げな顔は?」
「だって、よかったね、って棒読みなんだもん。」
「悪かったね、生憎あたし演技力ないからさっ。」
笑いながらそう言う暖ちゃんが、今日もやっぱりこわい。
いや、大好きなんだけどね!

