今日はなかなか終わらない。
いつもよりも在庫が出た量が激しくて、一人では進まなかった。
他のコーナーのスタッフが倉庫から出て帰った後、松田さんが来た。
イベント用の制服姿ではなく、スーツのジャケットを羽織っているのに目がいく。
あまりにもしっくりと似合っている。
「お疲れ様。今日は大変だったね。」
「松田さんも、お疲れさまです。
お茶、ありがとうございました。
おいしかったです。」
黙って微笑んで、集計を手伝ってくれる。
無言だけど、心地いいと感じた。
息づかいで流れる、微かな空気だけしか存在を感じなくても、二人きりで作業しているだけで楽しい。
そういう経験は初めてだった。
ときおり横目で映る背中は、遠くから眺めるよりも大きくて温かくみえる。
