「こういうの飲んでるの、寧々ちゃんぽいね。
自販機にあって気になってたけど、意外とおいしいね。」
ボトルを返した時の目で、私は負けたと思った。
私は恋愛経験なんてないし、人を見る目があると言えるほど、人生経験もない。
そんな私でもわかってしまうくらいに、挑発的な目だった。
私が彼を意識していることも、何を期待してここに座っていたのかも、なにもかも知っているというアピールだった。
「今日もお疲れ様。
いつも助かってるよ。」
「松田さんも。お疲れさまです。」
倉庫から出ると、もうバイトの人はほとんど帰っていて、昼間とはうってかわって静かな会場があった。
「じゃあね、気をつけて。」
「ありがとうございます」
一瞬だけ見えた。
あるいは見せたのかもしれない、あの目が頭から離れなかった。
敵わないけど、敵おうなんて考えないほうがいいのかもしれない。
