会話文短編集






「なあ、何怒ってんの?」




「別にー?怒ってないけど?」




「怒ってんだろ」




「怒ってないってば」




「あーそうですか」




「(彼氏の拓哉とは付き合って1年経つけど、
私のこの捻くれた性格だとか、すぐに意地をはるところとかは、相変わらず迷惑をかけてると思う。

でもどうしても、素直になれない。
なんだか恥ずかしい)」




「ったく、めんどくせえな」




「(…そうだよね。
あたしは、いつ振られても可笑しくないんだ。
こんな性格なんだもん。今までもそうだし)」




「さっさと来いよ、こっちに」




「え?」




「お前が素直になれねぇことぐらい、
分かってんだよバカが。
俺をなめんじゃねぇぞ」




「…な、何言ってん…」




「あーもう!めんどくさ!」




「…っ」




「いいよ、お前はそのままで。俺から行く」




「へ?へ?!

(うわ!抱きしめられた!?)」




「お前が素直になれないことぐらい、分かってんだよ。
そんなお前がめんどくせぇのに、離れられないことだって分かってんだよ。バーカ」




「…バカバカ言い過ぎ。ムカつく。」




「はいはい」




「(どうせ拓哉は気づいてる。
今の言葉も、ただ素直になれないあたしの精一杯の照れ隠しだってこと)」





END