ふと目をあけると目の前には青い海が広がっていた。

海と言っていいのかは分からない。

なぜなら、私は今その海の上に立っているからだ。

一歩足を踏み出すたびに波紋ができる。

裸足なので少し冷たい。

服がぬれるのも気にせずに海の上に寝転ぶ。

そして、もう慣れてしまったこの風景をただ、ぼぉっと見つめる。

この世界は、私の夢。

私が創っている精神世界といっていいかもしれない。

ココにいるのは私だけ。

少しさみしい気もするが、現実よりもずっと安心できる。

上を見てみると、薄い雲に覆われた空が見える。


そっと手をのばす。

こんな数十センチの腕ではつかむことはおろか、触れることもできない。

ふっと自嘲的な笑みを浮かべて手をおろす。

そして、現実世界での朝がくるまで空を見つめ続けるのだ。


毎晩、この世界に来る私は飽きもせず同じことを繰り返す。

今日もこのままいつもどおりに朝を迎えるのだと思っていた。


ぱしゃり

水の跳ねる音がした。

「何」

跳び起きて音のした方を見つめる。

ココには私以外いないはずなのに。

「…え?天使?」

そこには茶髪のどこか抜けているような少年が一人。

わけのわからないことを言ってぽかん、と間抜け面をしていた。