結局6つの音まで鳴らせた新入生はこの後に、サックスとフルートを体験した。

「あの、ありがとうございました。多分入ります。」

帰り際にみやびのところに恥ずかしそうに走ってきた新入生はそれだけ言い残して、みやびの返事も待たずに、また走って行った。

後輩ができるんだな。

みやびは胸の中が暖かくなった。

校舎はもう夕陽に染まっていてまだ少し寒い春をあたためていた。野球部の掛け声の中に1年生は仮入部を終わり下校しましょうという放送が混ざって聞こえた。

みやびは楽器倉庫から引っ張り出してきた古い楽器をしまいながら少しだけ微笑んだ。