モナリザの微笑

 これが、あいつがまともに話しているのを見た最初だった。

 随分低い声だ、低いがよく通る、暗闇の底から響き渡るような、静かな声だった。

 同級生に話す時も敬語なのか、とか、随分冷たい口調で話すよなとか、そんなことはどうでもよい。


      “ただ、気味が悪い”
      ”ただ、怖い“

 そんな感情を誰かに抱いたのは初めてだった。

 やけに、人を観察している人なら、俺の周りにも何人かいる。


 だが、あいつは何なんだ?


 よく人間観察をしているにしては度を越している。


  表情を見れば分かるだって?
  もしそれが本当なら、
  気持ち悪すぎる。

「なんなら、君のことも教えてあげましょうか?僕は君のことだってよく知っていますよ。」

 あいつは笑った。

「いや、結構だ。お前みたいな奴とは二度と関わりたくない。もう、話しかけてこないでくれ。」


 そう言い捨ててあいつの傍を立ち去り、騒いでいた友達の輪に加わった。