目覚めたのは大きな崖の下だった。
「……ん。」
重い身体を起こすと女はふらふらと立ち上がった。
「ごっ、かはっ……!」
喉の奥からというよりは胃の底から競り上がってくるような熱を吐き出す。
赤い跡が地面に落ちる。
辺りを視線だけで見れば、同じ赤が散らばっている。
自身もまた、赤いのだろう。
そう思いながら歩き始めた。
痛みと目眩と苦しみ。
(此処はどこだ。)
呼吸さえも苦しい。
早く、誰か助けを借りなければ。
そう判断した。
少し歩くと身体が崩れ落ちる。
景色があまり変わらないことから、言うほど歩けていないのだと理解した。
(いつもならば、神の元へ還れる。)
だが、今は違う。
唯の人間だ。
(大天使が聞いて呆れる。)
自嘲する女。
彼女こそがウリエル。
人間の名をミシェラといった。
ゆっくりと長い睫毛を閉じる。
(もう、いい。)
どこか投げ遣りに思う。
こうなったのも思い返せば自業自得だ。
堕天使狩りの為に任務をしていた時、失態を招いた。
普段の戦いぶりからは考えられない隙が出来た。
それにより、手傷を負った。
脳内が揺らされる衝撃。
突如起こったことに対処出来ない。
記憶がふと流れる。
美しい男。
それと、自身であるミシェラの身体。
(何だ?)
その記憶は敵の攻撃という現実の痛みにかき消された。
その後、堕天使を神の元へ還した。
そこでアスモデウスとレヴィアタンに出会った。
最悪のタイミングだ。
そう思う。
直ぐに引き返さなければ勝機はない。
そう解っていたが、剣を握る。
勝てないくせに戦った結果、この様だ。
「う、ぐっ……」
呻き、背中に手を伸ばす。
何かが刺さっている。
抜き取ると、それは木のようだ。
崖から落ちる時に刺さったのだろう。
「全く、間抜けなことだ。」
神力が尽き、人間の姿の彼女は無力だった。
(こんな時、どうしていいかわからない。)
助けを呼ぶ概念を持たない彼女は死を待つ。
(我が父よ。)
心で名前を呼んだ。
静かな静寂。
そこで、夢を見た。
「ミシェラ。」
朗らかな両親。
直ぐに、生前の記憶だと理解した。
何の疑いもない。
ウリエルになる前の自分だ。
「キャロル。」
誰かが呼んでいる。
(誰だ?)
キャロルとは誰なのか。
それを思い出そうとする。
断片的に美しい男と神の姿が映る。
「……ん。」
重い身体を起こすと女はふらふらと立ち上がった。
「ごっ、かはっ……!」
喉の奥からというよりは胃の底から競り上がってくるような熱を吐き出す。
赤い跡が地面に落ちる。
辺りを視線だけで見れば、同じ赤が散らばっている。
自身もまた、赤いのだろう。
そう思いながら歩き始めた。
痛みと目眩と苦しみ。
(此処はどこだ。)
呼吸さえも苦しい。
早く、誰か助けを借りなければ。
そう判断した。
少し歩くと身体が崩れ落ちる。
景色があまり変わらないことから、言うほど歩けていないのだと理解した。
(いつもならば、神の元へ還れる。)
だが、今は違う。
唯の人間だ。
(大天使が聞いて呆れる。)
自嘲する女。
彼女こそがウリエル。
人間の名をミシェラといった。
ゆっくりと長い睫毛を閉じる。
(もう、いい。)
どこか投げ遣りに思う。
こうなったのも思い返せば自業自得だ。
堕天使狩りの為に任務をしていた時、失態を招いた。
普段の戦いぶりからは考えられない隙が出来た。
それにより、手傷を負った。
脳内が揺らされる衝撃。
突如起こったことに対処出来ない。
記憶がふと流れる。
美しい男。
それと、自身であるミシェラの身体。
(何だ?)
その記憶は敵の攻撃という現実の痛みにかき消された。
その後、堕天使を神の元へ還した。
そこでアスモデウスとレヴィアタンに出会った。
最悪のタイミングだ。
そう思う。
直ぐに引き返さなければ勝機はない。
そう解っていたが、剣を握る。
勝てないくせに戦った結果、この様だ。
「う、ぐっ……」
呻き、背中に手を伸ばす。
何かが刺さっている。
抜き取ると、それは木のようだ。
崖から落ちる時に刺さったのだろう。
「全く、間抜けなことだ。」
神力が尽き、人間の姿の彼女は無力だった。
(こんな時、どうしていいかわからない。)
助けを呼ぶ概念を持たない彼女は死を待つ。
(我が父よ。)
心で名前を呼んだ。
静かな静寂。
そこで、夢を見た。
「ミシェラ。」
朗らかな両親。
直ぐに、生前の記憶だと理解した。
何の疑いもない。
ウリエルになる前の自分だ。
「キャロル。」
誰かが呼んでいる。
(誰だ?)
キャロルとは誰なのか。
それを思い出そうとする。
断片的に美しい男と神の姿が映る。


