美しい嘘

外も暗くなって雨もやんだようだ


「そろそろ帰る?」

勉強に集中するお兄ちゃんに小声で言う

「あぁそうすっか」

んーっと背伸びをするお兄ちゃんを横目に私は席を立った


「お兄ちゃん置いていくよ〜」

「ちょっ待ってっ」


焦るお兄ちゃんを背に先に店を出て傘を手に取る

雨はやんで夜の静けさを取り戻していた


「置いてくなよ〜」

「いいでしょ」

「帰るか」

「うん」


2人で家に向かって歩く



「お兄ちゃん」

「ん?」

「なんか始めてみようかな」

「興味あるならやってみたら?」

「暇だからさ」

「いいんじゃない?」

「ありがとう」


お兄ちゃんは私を否定しない

全てを受け入れてくれる


どうしてこんなにも優しいのか

全く私にはわからない



ただ私は嘘をついた



なんか始めようだなんて


思ってない