「コウ!雅!」


横西さんのクラスに向かう途中、向こうから歩いてくる二人を呼び止めた。


「横西さん見なかったか?」


「横西さん・・・?ああ、ついに鈍感なお前も答えを出したわけね」


「なんだよ、雅。答えとか、分からないから横西さんを探してるんだよ」


「あちゃ・・・最後の最後まで鈍感だね~」


雅はわざとらしく手のひらを額に当てながら、天を仰いだ。



隣のコウに素早く視線を向けると、少し驚いたように後ずさりした。


「横西さんなら、うちの教室に来たよ。お前がいないならって、すぐに帰ったけど」


「カラオケでも、どう?って誘ったら、今日もバイトだって」


「バイト?分かった、ありがとう」


「ちょっと待った」


急いで追いかけようとしたが、雅にしては珍しく力強い言動に止められてしまった。

振り返ると、表情もいつになく真剣だ。


「お前、特別な人っている?」


「何をいきなり・・・」


「気付いていないかもしれないけど、いるはずさ・・・お前にも。高校三年間を振り返ってみろよ。誰が一番多く出てくるか・・・誰が一番色鮮やかか・・・ここまで言えば、世界一鈍感なお前でも分かってもらわないとな」


「特別な・・・人」


「なに、礼には及ばないよ。俺はいつでも女の子の味方だからね」


まだ礼を言っていないのに、本当に調子のいいやつだ。



けれども、高校生活はこうやってこの二人に支えられてきたのだろう。


「おい、一樹。状況はいまいち分からんが、とにかく頑張れよ!」


「おう!」


本当に二人ともありがとう。