「卒業一日前にして、まかさここに来れるとは・・・」


うちの学校は屋上を開放していないので、普段は立ち入ることはできない。

そのため、こうして屋上に来ることは初めてだった。


「西園寺さんは・・・初めてではないよね。鍵持っているくらいだし、何か色々と置いてあるし」


いつもなら高笑いでもするのだが、今日は先程から全く元気がない。


「もしかして西園寺さん以外でここに来るの、俺が初めてだったりして」


「・・・百合」


「えっ」


「水谷百合は・・・何度か来ているのだ」


西園寺さんと水谷さん。



その意外すぎる組み合わせに、驚きを隠せなかった。

その物静かで大人しい水谷さんが、言い方は悪いがわがままで破天荒な西園寺さんが仲が良いとは、恐らく学校中が想像もできないだろう。


「なんだ、貴様は。すずが学校で天涯孤独だと思っていたのか」


「いや、そんなことは思ってないけど、水谷さんっていうのが意外で」


「やつは色々と苦労しているからな・・・ほっとけなかったのだ」


本人からこうして言葉で聞いても、まだ信じられない気持ちが強い。

しかし、下の名前で呼んだということは、こちらの思っている以上に二人の仲は深そうだ。