「別に、用事が俺とは・・・」


「我那覇・・・ちょっと来るのだ」


名指しで呼ばれたら、間違えようがない。

一度下ろした腰を上げるのが面倒と思ってしまうとは、随分と歳を取ってしまったものだ。


「俺、何かしたかな・・・」


「心当たりがないというのが、いかにもお前らしいな」


「なんだよ、コウ。そんなこと言うなよ」


「何?何?修羅場ってやつ?」


「雅。そういうの、お前の悪いところだぞ」


「固いこと言うなよ、コウ。お前だって、こいつがどうなるのか気になるだろ」


二人の話し声から遠ざかり、西園寺さんの元へと歩み寄る。


「ついて来るのだ」


一言だけ呟き、彼女は階段を上っていった。

どこに連れていかれるか分からないが、遅れを取らないように続いた。