卒業式一日前となると、さすがに授業もなく、卒業式の練習に追われた。


「練習なんか意味あるのかね?」


昼休みになり教室に戻ると、すぐさま机に座って八坂雅(みやび)が駄々をこねる。

正直、雅と同じ気分、気持ちなのだが、それを口にしてしまうと、午後からの練習が億劫になりそうで我慢した。


「まあまあ、授業をやられるよりは、まだマシだろ?」


それでも不服そうな表情で、雅は頬を膨らませながら弁当を取り出した。


「おい」


「どうした、コウ。弁当でも忘れたか」


雅の前に立ったコウは、なにか難しい表情をしていた。

先程まではそんな素振りを一切見せていなかったので、機嫌が悪いわけではないはずだが。


「お前、何かしたのかよ」


「なんだよ、それ。何もしてねえよ」


「じゃあ、なんで西園寺さんが教室の前にいるんだよ」


教室のドアを見ると、確かにそこには西園寺さんが立っていた。