「我那覇くん、学校ではめぐみちゃんと同じクラスだったよね?」


バイト場に着いて制服に手をかけようとしたとき、マネージャーが呟くように言った。



横西めぐみ



同じ高校のクラスメートであり、一年のときから仲の良い友人でもある。


「そうですけど」


着替えながら返事をすると、マネージャーがどこか浮かない表情をしていた。

そういえば、「今日は一時間早く来てくれと言われた」と大慌てで学校を後にした彼女の姿は、ここにはなかった。


「まだ来てないんですか?」


分かりきったことを質問する頃には着替えも完了し、厨房へと足を運ぶ。

やはり彼女の姿はどこにもないようだ。


「連絡もつかないし、学校で何か言っていなかった?」


「いえ、特になにも・・・」


むしろ、張り切っているくらいでしたよ、という言葉は口から出さずにとどめた。

実際、慌てていたものの表情自体はいつものように明るい笑顔のまま。

バイトをサボるようにはとても思えない・・・



そういえば、最近は学校や遊びにいったときも「お兄ちゃんが」「お兄ちゃんが」と、やたらとお兄さんのことを口にしていたように思う。


「俺、家に様子見てきます」


彼女の家は歩いて五分くらいのところということもあり、マネージャーは「よろしく」とだけ言い、変わらずに仕込みを続けた。