マイクと通したような声は徐々に大きくなっていき、体の芯を揺さぶって来る。


あたしと愛奈は耳をふさぎ「やめて!!」と、叫ぶ。


しかし車掌さんは辞めてくれない。


何度も何度も同じ言葉を繰り返し、そして更にその声は大きくなっていく。


呪文のような言葉に、ついに朋樹が立ち上がった。


青い顔をしたまま雄たけびをあげて車掌さんへ拳を振り上げる。


「おぉぉぉぉ!!」


恐怖を振り払うように叫び、そして拳を振り下ろした。


その瞬間、朋樹の手は車掌さんの体をすり抜け、車掌さんはまるで霧のように消えて行ってしまったのだ。


唖然としてその場に立ち尽くす朋樹。


さっきまでの寒さはいつの間にかなくなり、正常な気温が戻ってきている。


ふとドアを見て見ると、そこもキッチリと閉ざされ前の車両には闇が広がっていた。


「今のは……なんだったんだ……」


誰もが茫然としたまま、旺太がそう呟いたのだった。