「1つ、おかしい事があるんだ」


朋樹がそう言った。


「おかしい事?」


あたしは聞く。


「あぁ。俺、蝶を追ってたどり着いた駅も、この電車も全く見覚えがねぇんだよ」


「あ、それはあたしもだよ。こんな電車知らない」


そう答えると、愛奈と旺太も頷いた。


「なぁそれっておかしくないか? 蝶を追いかけていて迷子になったとしても、全く見覚えなのない場所まで来るか?」


「それは……ないわよね。小さな子供ならともかく、あたしたちが蝶に夢中でどこかもわからない場所に来るなんて」


愛奈が言う。


だけど、実際にそんな事が起こってしまった。


知らない駅。


知らない電車。


自分の家がどこにあるのかも、わからない状況だ。