あたしたちはみんな電車に乗るつもりなんてなかった。


切符だって買っていない。


それなのにこの電車に乗れたのは、あの人があたしたちの乗車を拒否しなかったからだ。


「あり得るな」


朋樹が、珍しく愛奈の意見に賛成した。


「あいつは向こうの車両で俺たちを見て笑っているのかもしれない。そう過程すると、監視カメラがないのも納得できるだろ?



向こう側から撮っていればこの車両には設置しなくていいんだからな」


そう言い、朋樹が前の車両を指さす。


そう言われると、暗闇の中で薄笑いを浮かべながらカメラを構えている車掌の姿が脳裏に浮かんできた。


闇にまぎれるために黒い服を着ている。


そう考えれば、すべて繋がっていくような気がする。


でも……。


あたしはついさっき、愛奈と朋樹の怒りが自分の中に入り込んできた時の事を思い出していた。


あれは2人の感情が共有されたものだった。


だとすれば今の事考え方も朋樹の考えを共有されたものかもしれない。