焦る気持ちとは裏腹に、胸の中に腹立たしさを感じている自分がいた。


喧嘩はよくない。


喧嘩をしている場合でもない。


それなのに、あたしの胸の奥にはムカムカとした黒い感情が生まれてくる。


あたしは自分のそんな感情に戸惑っていた。


普段から喧嘩をしたことなんてないし、学校では大人しい方だ。


こんな攻撃的な感情を持ったことは、今までに一度もない。


「やめろ」


低い声が聞こえ、2人の公論が止んだ。


見ると、旺太が2人を睨み付けているのがわかった。


「お前たちが喧嘩をすると、こっちまで感情を乱される」


「はぁ? どういうことだよ、それ」


朋樹が旺太を睨み付ける。


「もしかしたら、この空間では感情も共有される部分があるのかもしれない」


旺太の言葉にあたしは目を見開いた。