生き物だとしても、きっとあたしたちが見たこともない化け物に違いない。


あたしと旺太はジッと開いている窓を見つめていた。


外には相変わらず暗闇が続いていて、何も気配は感じない。


電車内に化け物が入って来る様子はない。


「また……振って来るの?」


愛奈が震える声でそう言った。


誰に向けてきいているのかはわからないけれど、この表情を見ると答えを欲しがっているように見えた。


「……わからないね」


あたしは左右に首をふってそう答えた。


なるべく視界に入れないようにしていた澪の死体を、嫌でも見てしまう。


澪の死体は重力に逆らったままの状態で、窓の外にある。


頭蓋骨がひび割れその間から流れ出るピンク色の脳味噌が、車内の電気に照らされてヌラヌラときらめいて見える。


その時だった、突然愛奈が朋樹の胸倉をつかんだのだ。


咄嗟の事で、あたしも旺太も動く事ができなかった。