「あのさ、実は俺も気になる事があるんだ」


「なに?」


あたしは聞く。


「この電車に乗った時からずっと自分自身に違和感があるんだ」


「体の違和感でしょ?」


あたしが聞くと、旺太は首を振った。


「俺は体の異変は感じていないんだ。でも、何かを忘れているような気がしてるんだ」


「忘れる……?」


「そう。なにか……すごく大切な事なんだけど……なんだったかな」


旺太はそう言い、頭をかきむしる。


「忘れているというか、喪失感ならあるな」


朋樹が横から口を挟む。


「喪失感?」


優志が聞く。


「あぁ。なにか、元々持っていたものを奪われた感じだ」


そう言い、朋樹は自分の胸に手を当てた。


あたしも、つられて自分の胸に手を当てる。