それでも腕はちっとも動かない。


どうせ負けるんだからそこまで手加減しなくていいのに。


そう思い、朋樹を見た。


朋樹は顔を真っ赤にし、呼吸を止めてジッと拳を見つめている。


握りしめている拳は小刻みに震え、まるで本気で勝負しているように見える。


その光景に、他の面々も唖然として口を開けている。


これは一体どういうことなの?


「ダメだ……勝てない……」


朋樹がそう言い、あたしから手を離した。


手のひらにはジットリと汗をかいていて、ベトベトする。


「朋樹、今本気を出していたよね?」


あたしが聞くと、朋樹は頷いた。


ならどうして朋樹はあたしに勝てなかったんだろう?


「見た目ばっかりで弱いんじゃないの?」


愛奈がそう言い、朋樹が睨み付ける。


「俺はアームレスリングの大会で何度か優勝した事があるんだ! 女に負けるわけがねぇんだよ!!!」


「じゃぁなんで負けたのよ。優勝なんて嘘でしょう?」


「なんだと!!」