とにかく、彼女が元気そうならそれでいい。


名前くらい知っておきたかったけれど、それは叶わぬ願いだ。


俺はその場で立ち上がり、彼女に背を向けた。


その、瞬間……。


「マリよ」


そんな声が聞こえてきて、立ち止まった。


「あたしの名前はマリ」


勢いよく振り返ると、ベッドの上で目を開けた彼女がいた。


「俺の……声……」


「聞こえる。顔も、見えるわよ」


そう言い、ほほ笑む彼女。


「な……んで……?」


喜びよりも驚きの方が大きかった。


「だって、これって夢でしょう?」


夢……。


彼女……マリにとってこれは夢の延長戦みたいだ。


でも、それならそれでいい。


「俺の名前は旺太」


「旺太。いい名前ね。あたしを助けてくれたのは、あなたでしょう?」


「どうしてそれがわかるんだ?」