そう考え、俺はノックをせずにドアに手を伸ばした。


すると、その手はスッとドアをすり抜けていってしまった。


「ドアを開ける必要もないのか」


俺は呟き、ドアをすり抜けて中へと入った。


職員室には数人の先生がいるだけで、静かなものだった。


その中に俺の担任だった先生の姿はない。


さすがに休み中だと出勤してくる先生も少ないようだ。


それに俺が入ってきても誰もこちらを見てこない。


やっぱり、俺の姿は見えないと言う事か。


俺はまっすぐに担任だった先生の机に向かった。


女の先生で若くて綺麗だったため男子生徒からはものすごい人気が高かった。


ただ、その分ナメられることも多かったらしく、俺は先生が影で泣いている所を目撃したこともあった。


教室では懸命に我慢していた涙が、ワッと溢れてしまったのだろう。


その姿を見た俺は先生になんと声をかけていいかもわからず、黙ってみなかった事にしてしまった。


どうせ死んでしまうなら、あの時声をかけておけばよかった。


そう思い、先生の机を見た。


先生の机にはクラス写真が飾られていて、その中の俺は安田を一緒ふざけたポーズをとっている。


それを見て思わず噴き出す俺。


そういえばこの時俺のピースした指が安田の鼻に入って、あいつ鼻血出したんだっけ。