自殺列車

そしてある時は、あたしに着飾るように命じて来た。


女は綺麗でなきゃいけない。


綺麗でなきゃ男は離れていってしまうから。


小さな部屋のドアが開き、光がさしこんだ。


あたしは顔をあげドアを見る。


そこには仁王立ちをして、アイスピックを持っている母親の姿があった。


光がさしこんだ事で膨らんでいた期待は、一瞬にして恐怖へと変わっていく。


母親が部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、あたしはビクンッと身を震わせた。


無意識の内に、ピアスの穴に触れていた。


このピアスの穴は母親に無理やりあけられたものだった。


消毒もせず、ピンセットをねじ込まれたため何日も熱を持ち、膿がでてきたのだ。


痛みと、耳が落ちてしまうんじゃないかと言う恐怖を一瞬にして思い出していた。


「お母さんやめて! ピアスの穴なんていらない! あたしの体に穴をあけるのはもうやめて!!」


母親の持っているアイスピックがギラリと光る。


あんなもので穴を開けられるなんて、耐えられない……!


部屋の奥へと逃げるが、すぐに距離を縮められてしまう。


この部屋の出入り口は、母親が入ってきたドア1つだけ。


窓は狭すぎて逃げ道にはならない。