縛られている俺は、それでも奴らを睨み付けていた。


虚ろになりそうな目にグッと力を込めている。


気絶すれば楽になれるのに、自分自身がそれを許さない。


こいつらには負けない。


そんな意思があった事を思い出していた。


でも……それが奴らの行動を更に悪化させた。


顔面や腹を好きなだけ蹴った奴らは、俺の体を抱え上げたのだ。


公園に自分たち以外の影はなく、俺は声をあげる体力すら残っていなかった。


そんな俺を、やつらは公園にある深い池へと放り投げたのだ。


体に冷たい水がまとわりつく。


必死でもがくが、手足の自由がないからズブズブと底へと沈んでいく体。


ガボッ! と口から水を大量に飲み込み、肺が圧迫される。


暗い池の中では奴らの顔もみえなくて、水が邪魔をして罵倒もできない。


苦しくて、寒くて、悔しくて……。


あれは、忘れもしない3月5日の事だった。


「朋樹、大丈夫か?」


そんな声が聞こえてきて、俺はハッと我に返った。


目の前には旺太がいる。


俺は気づかれないように小さく息を吐き出した。


そして自分の拳と、映像が映し出された板場所を交互に見つめる。


俺は今、ここにいるんだよな?