「…嫌じゃありません…蘇芳先生の傍に居たい…このマンションに越してきてもいいですか?」


雪愛の言葉に、蘇芳先生は安堵の溜息をつき、微笑んだ。

「…ありがとう、雪愛」
「…そんな、お礼なんて言われるような事じゃありません。…私がここに転がり込むんですから…よろしくお願いします」

急に改まって頭を下げた雪愛を、もう一度抱きしめ直した蘇芳先生が、雪愛の耳に囁いた。

「…一つ、お願いがあるんだけど」
「…お願い、ですか?」

「…あのパジャマで、寝て欲しいんだけど」
「…へ?…あのパジャマ、って、どれです?」

「…うさ耳のついたやつ」

蘇芳先生の言葉に、ハッとした雪愛は、顔を赤くした。

「だ、ダメですよ、イヤですよ!一人だから、あれ着れましたけど、蘇芳先生の前であれは恥ずかしいです…」

…ここで一緒に暮らすなら、あのコスプレみたいな服は封印したい。と、雪愛は思っていた。

「…雪愛に似合うから、あれで寝て」
「い、イヤですよ!恥ずかしい!」


…。突然蘇芳先生が黙り込んだ。…その代わり、意地悪な笑みを浮かべて…

「いいって言ってくれるまで、今夜は寝かさない」

…それは、有言実行される。



「…わかりました、…わかりましたよ。着ますから、…これ以上は、私の身体が持ちませ…ん…」

「…良かった…でも、一度ついた火は消えそうにない」

…その夜、蘇芳先生はいつまでも、雪愛を寝かしてはくれなかった。