…蘇芳先生は、車に乗る事も忘れ、ただひたすら走り回った。

最寄駅、バス停、タクシー乗り場。近くのお店や公園も。

それでも雪愛は見つからない。

仕方なく、一度病院に戻った蘇芳先生は、車に乗り込むと、向かった先は、雪愛のアパート。

…外から見たら、部屋の中は、真っ暗。それでもドアの前まで行くと、インターホンを鳴らした。

…だが、応答はない。

…しばらく待ってみたが、帰ってくる気配もない。

溜息をついて、蘇芳先生は自宅マンションに帰った。

…帰宅したのは午後9時。クタクタになりながら、リビングに行くと、蘇芳先生はテーブルを凝視した。

…雪愛らしいと言えばらしいのか。

蘇芳先生は片眉を上げた。









「…これ、どこの鍵だ?」



このマンションの鍵はオートロックだ。鍵を置いて帰っても、一度ドアを閉めてしまえば、鍵はかかる。

雪愛は、この家の鍵を置いて行ったに違いない。


…が。

おっちょこちょいの雪愛は、このマンションの鍵を置いて行ったつもりで、実は雪愛のアパートの鍵を置いて帰ってしまっている。