「鍵以外の物に見えるか?」
「・・・いえ・・・この鍵は、どこの?」

恐る恐る問いかけると。

「俺の自宅の鍵だが」
「・・・」

恐れていた事が的中してしまい、雪愛は固まった。

…なぜ、嫌われているはずの蘇芳先生から、よりにもよって、大事な大事な自宅の鍵を預けられたのか?

雪愛は、疑問ばかりが頭に浮かび、言葉が出てこない。

「…体調管理を、してくれると言ったのは、島崎だ」
「・・・」


…体調管理を『しろ』とは言ったが、体調管理を『する』とは、一言も言っていないはずだが。

雪愛は、眉間にしわを寄せた。

「作りに来れる時だけでいい。勝手に入って、勝手に料理して、置いておいてくれればいい」
「・・・あの」
「…なんだ?」

「私なんかの料理、食べたいですか?…最初に、あまりお気に召さなかったのかと思ったんですが。急に、お弁当を作れと言ったと思ったら、今度は、自宅まで行って、料理をしろなんて・・・私は、蘇芳先生の家族でも、彼女でもありませんけど」

きっぱり言ってやったと言う顔の雪愛。

・・・でも、当の蘇芳先生は、顔色一つ変えない。

「…君は、看護師だろ?医者の面倒位見てくれてもいい」
「・・・・」

…看護師ではあるが、決して、栄養士ではない。第一、看護師が医者の面倒を見るのは、おかしいとしか言いようがない。