困惑する雪愛を余所に、三条先生は話しを進める。

「おめでとうとは言えないし、応援も出来ないけど、幸せな雪愛ちゃんの邪魔をするつもりは全然ないよ。でも、好きでいる事は、構わないだろ?」

「・・・・」

・・・いいですよ。なんて、言えるはずがなかった。この際だから、きっぱり諦めてほしかった。自分以外の女の子を見てほしかったから。


…ビクッ。

テーブルに置かれた雪愛の手が震えた。…三条先生が、雪愛の手を握ったからだ。

「俺は、君が好き。…他の誰でもない。島崎雪愛の事が好きなんだ」
「…三条先生、私は、蘇芳先生の事が好きです。…三条先生の気持ちは嬉しいけど、諦めてほしい。もっと、周りを見てほしいんです」

雪愛の懇願するような言葉にも、三条先生は、首を振った。

雪愛は、握られた手を見て、その手を離そうとしたが、三条先生がそれを許さなかった。

「何で、蘇芳先生なの?」
「・・・」

「俺の方が、もっときっとずっと優しいのに」
「…蘇芳先生も、優しいですよ」

「毎日だって、愛の言葉を囁くのに」
「…最初に聞きましたから、何度も言ってくれなくていいんです」

…本当は、最初の告白の時に、好きだと聞いただけで、蘇芳先生は、好きだとは言わない。

でもなぜ言わないのか、その理由は分かっている。

だから、雪愛は、無理に、好きだって言わせたいと思っていない。