「蘇芳先生がどうしたの？」

それでも、強張ったのは一瞬で、直ぐにいつものように優しい表情に戻った三条先生が問いかける。

「…三条先生が言ってくれたように、自分の気持ちに、正直になってみたんです」
「・・・うん」

「…そしたら、・・・あの、両思いだったみたいで」
「・・・え？！」

『両思い』その言葉に、三条先生は驚いていた。

…無理もない。蘇芳先生は、いつも何を考えているのかわからない。まさか、雪愛の事を好きだったなんて。どちらかと言えば、煙たがっていたように見えたが。

しばらく沈黙して、次に口を開いたのは、三条先生だった。

「…蘇芳先生と、付き合う事になった？」
「・・・はい」

「・・・そう」
「…言うべきか迷ったんですけど、こういう事は、ちゃんと言っておいた方がいいと思って」

困ったように言った雪愛。

「…俺が、雪愛ちゃんを好きだから？」

もちろん、それもある。

「…雪愛ちゃん」
「・・・はい」

「おめでとう、とは、言えないけど」
「…わかってます」

・・・しばらくの沈黙。雪愛は、この沈黙に耐えられなくなってきた。

「ゴメン」
「・・・え？」

でも、三条先生の、突然の謝罪に、目を見開いた。

「何で、三条先生が、謝るんですか？」
「…それを聞いても、雪愛ちゃんの事、嫌いになれない…いや、むしろ、もっと好きな気持ちが大きくなって」

「…三条先生」