蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)

懇願するような瞳で父に言い放った坂本先生。

「…アナタ」

母も、困惑顔で父を見ていた。

「…祝福したいのに、それもストレスになると言うのか?」
「・・・え?」

ずっと険しい顔をしていた父の顔が、穏やかな顔になっていた。

「こんな手の込んだ芝居など、する必要がどこにあった?最初から真実を告げればいいものを…赤ちゃんの為に頑張っている彼女に失礼じゃないのか?」

「…反対しないんですか?」
「反対する必要があるか?私も母さんも、お前が幸せな家庭を持つなら、それ以外何も望んでない。ずっと独り身なのが心配だっただけだ、なぁ、かあさん」

「・・・えぇ」

…両親は、一人息子が心配だっただけ。いつまでも彼女の一人も出来ない息子が不憫で、幸せになってもらいたくて、見合いを勧めていたにすぎない。

「・・・嫁と孫がいっぺんに手に入るんだ。こんなに嬉しい事が他にあるか?だから、近いうちに、彼女に合わせなさい、いいな?」
「・・・はい」


・・・坂本先生は、泣きそうなのを必死に堪えていた。雪愛はそんな坂本先生の背中を叩いた。

「良かったですね」
「…ありがとう、雪愛さん」

「…上手くいったみたいなので、私たちはこれで。ほら行くぞ」
「え、は、はい」

蘇芳先生は、雪愛の手を取ると、ずんずん歩いてレストランを出ていく。その蘇芳先生の背中は、明らかに怒っていて、雪愛は、よからぬ事を考えていた。