…次の日、夜勤だった雪愛は、午前10時に起床した。だが、その目覚めは、決していいものではなかった。

「…もしもし?」

目覚まし時計ではなく、携帯の着信で起こされた。寝起きの声でそれに出た雪愛だったが、電話の相手は、一言も発しない。

一瞬、携帯を耳から離し、着信相手を確認するが、番号が表示されてるだけで、誰だかわからない。

…間違い電話か?

「…どちらにおかけですか?間違いなら切りますよ?」
『…俺だ』

…俺だ??…誰??再び、携帯の表示を確認したが、番号では、誰なのかわかるはずもなく。

「俺だって、誰ですか?イタズラなら切りま『…蘇芳たけど』

…寝ぼけた頭が一気に覚醒したのがわかった。

「な、なな、なんで、私の携帯…」
『職員名簿を見ればわかる』

…なるほど。あれには確か、連絡先や住所が記載されてるな。と、雪愛は納得した。

『なんで、何も言わずに帰った?』
「…」

『帰る時には、一声かけろと言ったはずだが?』
「…気持ちよさそうに眠ってたから…起こすのは申し訳ないと思ったんです」

…。

しばらくの沈黙の後。

『…次は、寝てても必ず起こせ。女が一人、夜道を帰るのは危な過ぎるから』

「あの…‼︎…」

雪愛が言葉を発しようとしたら、切られてしまった。

…全く、目覚め悪い。雪愛は、深く溜息をついた。自分は悪くないのに。なんであんな言われ方をしなければいけないのか?

…ん?

わざわざ連絡をくれたのは、心配してくれてたのかな?と、思ったが、大きなあくびが、その思考を途切らせた。