…真夜中、仕事を終えた蘇芳先生が帰宅した。リビングは真っ暗で、電気を点けた。

ダイニングテーブルの上には、ラップされた夕食が用意されていて、置手紙があった。

『温めて食べて下さい。…今日は、ごめんなさい』

雪愛にあんな態度を取ってしまったことを後悔していた。雪愛は、話を聞いて欲しいと言っていた。

聞くべきだったのに、余計な気持ちが邪魔をして、それができなかった。

手紙を置くと、蘇芳先生は、愛の所にいるであろう雪愛の所へ行く。

ベビーベッドの上では、愛がスヤスヤと眠っている。その愛らしい寝顔に、顔が自然と綻ぶ。

…愛が眠っているなら、雪愛は何処に?

辺りを見渡すと、ダブルベッドの上に丸まって眠る雪愛の姿。

蘇芳先生は、そっと雪愛に近づき、ベッドの傍に腰を下ろすと、雪愛の顔にかかった髪の毛をかきあげた。

「…⁈」

雪愛の目尻にうっすらとある涙。蘇芳先生は、その涙を優しく拭うと、雪愛を抱き締めた。

「…ん…ひで、あきさ…?」

あまりに強く抱き締めたので、雪愛が目を覚ました。