「貴女はなんでもポジティブに物を考えるんですね」

「…そうでもないですよ。蘇芳先生と付き合ってる頃なんて、ずっとネガティブな物の考え方しかできなかった。だけど、そんな考え方を変えてくれたのは、蘇芳先生です」

そう言って苦笑する雪愛に、坂本先生は、なんだかホンワカした気持ちになっていた。

…蘇芳先生は、裏表のない雪愛に惹かれたんだろうと思った。

「…蘇芳さん」
「…はい?」

「この話は、ここだけの事にしてくれませんか?」
「え?そんな事出来ませんよ。せっかく仲直り出来るのに」

「…貴女に聞いてもらえただけで、十分です。それだけで、ここにつっかえていた物が、取れた気がするから」

「でも!」

納得いかない雪愛は、反論する。でも、坂本先生は首を振った。

「…それに「…雪愛」

坂本先生の声に、誰かの声が重なった。雪愛は驚いて振り返る。

「…秀明さん」
「…今日は診察のはずなのに、何の連絡もないし、病院にも来なかったから、携帯に連絡したんだぞ」

その言葉に、病院からずっと、マナーモードにしていた事を思い出す。

「…坂本先生、院外で、患者と親密になるのはどうかと思いますが?」

冷たい眼差しで言い放つ蘇芳先生。…雪愛に近づく坂本先生に、嫉妬している。