…それから約2時間後。

雪愛は一週間分の料理を作り終え、冷蔵庫にしまうと、奥にある書斎に向かう。

二回ノックしたが、返事はない。悪いと思ったが、返事が無いので仕方なくドアを開けた。

…すると、デスクに突っ伏している蘇芳先生が目に入ってきた。

…無理も無い。毎日睡眠時間なんて、2時間、あっても3時間あればいい方。蘇芳先生は、寝る間も惜しんで仕事をしている。

起こすのは可哀想で、雪愛は、自分のカバンからストールを持ってくると、スヤスヤと眠る蘇芳先生の肩にそっとかけた。

…蘇芳先生の寝顔は無防備で、ちょっと可愛らしい。

雪愛は、その寝顔を見て、笑みを浮かべた。

そして、無意識に、目にかかる前髪を優しく撫で上げる。

「…ん」
「…‼︎」

少し動いた蘇芳先生にビクッとなった雪愛は、慌てて手を離し、逃げるように書斎を出ると、カバンを持ち、家を出た。そして、ちゃんともらったキーで鍵をして、自宅に帰った。