「…ビックリした。どうしたんですか、蘇芳先生?…あ、食器ですか?もらいます。邪魔になりますから、あっち行っててください」

食器を流しに置いた雪愛は、蘇芳先生の背中を押して、キッチンから追い出す。

「…何か手伝おうか?」
「いいです、いいです。1人の方が早いか…」

…。雪愛は、自分の手を凝視する。

なぜ、雪愛の手を、蘇芳先生が握り締めているのか。

「…あの」
「…悪い。…俺は奥の書斎で仕事してるから、終わったら声かけて。送って行くから」

そう言い捨てると、蘇芳先生は、逃げるように書斎に行くと、バタンとドアを閉めた。

…そして、大きな溜息をつく。

何故、雪愛を抱き締めたくなったのか?…何故、雪愛の手を握り締めてしまったのか?

…だいたい、この家に、何故、雪愛を誘ったのか。

蘇芳先生は、自分でも、自分の行動が理解できずにいた。

…でも、今日、数時間、雪愛と共に行動してわかった事がある。

雪愛と過ごす時間は、穏やかで、楽しかったという事。