色んな事が慌ただしく過ぎて行く毎日。

迎えた次の年の春、蘇芳医院が開院した。もう臨月の雪愛は、看護師補助という形で、病院の助けに入る。とはいえ、お腹がパンパンの今、どれだけ助けられるか不安はあったが。

雪愛の代わりの看護師、由紀がなってくれた。

「雪愛、お腹が大きくなって前も見えにくいのに、無理しなくて良いんだよ?最初だし、患者がどれ位来るのかなんてわからないんだし」

心配そうな顔で由紀が言う。

「うん、蘇芳先生にも同じ事言われた。だから、無理だけはしないようにするよ」

そう言って雪愛は笑った。

…それなりの宣伝はしたものの、大して患者はこないと思われた。…が。

予想を反する患者の多さに、蘇芳先生と由紀は慌ただしく患者の診察をこなしていく。

前から、蘇芳先生の患者だった人たちも、蘇芳先生に診てもらえるならと、こちらに転院する始末。

雪愛も、看護師として身重の体をなんとか動かし、てんやわんやの1日を過ごした。