…一度離れて電話で指示をした蘇芳先生はスマホを置くと、再び雪愛の傍に腰を下ろした。

「…お母さんが目を覚ましたって」
「本当ですか⁈」

「…あぁ、バイタルも落ち着いてるし、今夜はもう遅いから、明日の朝一番に会いに行けばいい」
「はい!…蘇芳先生、何から何まで、なんとお礼を言ったらいいか…感謝してもしたりません」

雪愛の言葉に蘇芳先生は首を振る。

「…こんなんじゃ、まだまだ足りない」
「…ぇ?」

「…離れてる間、雪愛はきっと、辛い思いをたくさんしたはずだ」
「そんな事は「ないわけないだろ?」

…蘇芳先生の言葉に肩をすくめる。

確かに、寂しくて、辛くて、哀しくて、恋しくて。

自分でそう仕向けたのに、そう思うことは許されないとどこかで思って…

「…俺も辛かったから…雪愛と離れてる時間は、短いようで凄く長かった。その時間を埋めることはできないけど、これからはもうずっと、雪愛の傍にいるから」

その言葉がどんなに嬉しいか、雪愛の嬉しさが、幸せだと思う想いが、どれだけ蘇芳先生に届いているんだろう。