……まだ夢見心地の雪愛は、夢の中にいると思ってその人に向けて夢なら覚めないでと願いながら、微笑みかけた。

すると、相手も微笑み、雪愛のおでこにキスを落とした。

「…夢なら、ずっと傍にいられる」

と呟いた雪愛は、ギュッとその人を抱き締めた。

「…夢じゃない」
「…」

「…現実なんだけど」
「…ん?」

その言葉に驚いて、上を見上げると、クスクスと笑う…

「…す、蘇芳先生⁈」
「…目、覚めたか?」

…恥ずかしい。…穴があったら入りたい…ちょっとここから逃げた出したい。とは思っても、拘束されてるので身動きも取れず。

「…あーえーっと…お母さんはどうですか?」

と苦し紛れに問いかけてみる。

「…安定してるよ」
「…そうですか…良かったです」

「…えーっと」
「…おかえり、雪愛」

「へ⁈…ぁ…ただ、いま」
「…俺の腕の中に雪愛がいる」

その言葉に、上目遣いに蘇芳先生を見れば、愛おしそうに雪愛を見返した。

…二人は見つめ合い、どちらからともなく顔が近づく…

「「…」」

そんな二人を邪魔するように、携帯が鳴る。
…病院からだった。