…それから、一度ICUに向かった雪愛は、看護師に挨拶を済ませ、病院を出た。

なにかあれば、直ぐに連絡が取れるように、携帯と職場の連絡先を残した。

…歩きながら、アパートに戻る事も考えたが、なんだか帰る気にならず、真っ直ぐ…蘇芳先生のマンションに向かった。

…鍵を開け、中に入ると、蘇芳先生と同じ匂いがして、安心した。

…来る途中、買い物に立ち寄り、食材を買って良かったな、と、冷蔵庫を開けて思った。

…じっとしていたら、悪い事ばかり考えそうで、料理でもしていたら、何も考えずに済むと思って、キッチンを借りて、料理に、集中した。

料理が出来上がると、する事がなくなって、とりあえず、ちょこんとソファーの端に座ってみるも、なんだか落ち着かず、携帯で音楽を聴き始めると、やっと、落ち着いたのか、はたまた気が抜けたのか、いつの間には眠ってしまった。

…あったかいな。

温かさを感じ、それを求めるように擦り寄ると、更にすっぽりと温かさが雪愛を包み込んだ。

「…雪愛」

…愛しい人の声に、雪愛はゆっくりと目を開けた。