「私、こういう感だけは、鋭いのよ?三条先生は、絶対、雪愛の事好きだよ」
「…私なんか、相手にするわけないよ。あれだけ優秀で、イケメンの三条先生だもん。綺麗なナイスバディの彼女がいるに決まってるじゃない」

そう言いながら、雪愛は、相変わらず笑っている。

「そうかなぁ?私は、本気で雪愛の事、好きだと思うんだけどなあ」

由紀も、譲らないとでも言いたいのか、雪愛の事を、絶対好きだと、何度も、言い張っていた。


…その答えを知る者は、三条先生だけ。まあ、雪愛にとっては、どうでもいい事でしかなかった。三条先生は素敵だけど、身の程をわきまえている雪愛にとって、遠い存在でしかない。

・・・今日の勤務を終えたのは、案の定、6時を過ぎての事だった。

ナース服から、私服に着替えた雪愛は、ようやく帰る事を許された。

職員専用の出入り口から外に出ると、一台の真っ白なベンツが止まっていた。

「…こんな所に止めるなんて、非常識な人」

そう呟き、雪愛は、どいてもらおうと、ベンツに近づいた。

…すると、運転席のドアが開いた。

…雪愛は、言葉を失った。

「乗りたまえ」
「…蘇芳先生、なんで」

ベンツから降りてきたのは、蘇芳先生だった。・・・流石と言うべきか、高級車に乗っている。

「鍵は渡したが、肝心の自宅を、君は知らないだろう?」
「・・・え、あ、ちょ!」

雪愛には、一言も反論する隙を与えず、蘇芳先生は、雪愛を車の中に押し込んだ。