駅のホームに着くと彼女は名残惜しそうに話し始める。


「またあの喫茶店行きたいな。ケーキとか美味しそうだったし、店長さん優しかったし。」

「うん。また行こう、颯さんも喜ぶよ。」



ちょうど良く電車が到着した。



「でも今度はひろがこっち来てね?あたしが案内してあげるから。」

「楽しみにしてる。」



彼女は嬉しそうに微笑んで電車に乗り込んだ。




『フィーッ!』




駅員の笛の音に合わせてドアが閉まった。

プシュー…



「…え…?」



無意識だった。


ドアが閉まるギリギリで彼女の腕を掴んでホームに引き戻した。



自分でも驚いた。


でも本当はわかってる。



モヤっとした気持ちの正体。



俺は颯さんに嫉妬したんだ。



そんなのかっこ悪くて亜紀には言えないから



「ごめん。電車、行っちゃった。」



そんな言葉しか出てこなかった。


「そうじゃなくて、っ…!」



言い終わる前に俺の唇と彼女のそれが重なった。