私の15歳の誕生日パーティーと婚約の発表を1週間後に控え、私は日に日に気分が沈みがちになってきた。


中庭で膝を抱えて座っていると真っ白な番犬のハウザーは、私の頬をペロペロと舐めながら慰めてくれる。

「有り難う、ハウザー。お前が人間だったら、きっと私、お前と結婚したわ」

その言葉を聞いたようで、ジョージが笑いながら、木の小枝に手を掛けながら私とハウザーの隣りに座る。

私達はおでこを合わせると、そっとキスを交わす。


「15歳の誕生日は何が欲しい?」


ジョージの申し出に首を振る。


「何もいらない」

「今のうち言わないと、ろくなもん上げられないぞ?」

ジョージの言葉に私は「それでもいいわ」と力無く笑った。

「どうしたんだよ。最近、元気ないぞ?」

ジョージは、心配そうに私の顔を覗き込む。


ジョージは知っているの?


おじい様のご病気のこと。

この家の借金のこと。


そして……


エドの顔が浮かび、打ち消すように首を振る。


「本当にどうしたんだよ?最近、お前、おかし……」


私はジョージの胸に顔を埋め、しがみ付く。



「何もいらないわ。ジョージが側にいてくれれば……」

「アリシア」


私は迫りくる黒い影が入り込む隙間がないくらい、強くジョージを抱き締めた。